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好きになる

 ふとマラソンのことを思い出しました。
 大阪市では毎年、大きなマラソン大会が二つも開催されます。ひとつは一月下旬の大阪女子マラソン。真冬の大阪の道を疾走していく女子選手たちの姿は大阪の風物詩と言っていいでしょう。
 このごろは一般参加も可能な大阪マラソンも開催され、大阪はマラソン観戦には恵まれたところです。テレビでみていると先頭集団ばかりうつされます。優勝争いの中なら駆け引きをしたりして、モチベーションも上がって頑張れるでしょう。しかし遠く離されてしまった後方の選手たちは四十二・一九五キロも走るのに、どうやってモチベーション保っているのだろう、いい加減うんざりしながら走ってるのでは、などと考えたりしますけれど、ナマでみると選手のスピードは速く、楽しそうというのか何か迫力があります。とことん走るのが好きなんだなあと思わされます。

○以前、娘の英語の成績が芳しくなく、ご本部のお結界で金光さま(さきの教主・金光平輝さま)にお取次をいただいたことがあります。金光さまは「まずは好きになることがだいじですねえ」とおっしゃいました。確かに好きでないと勉強時間だけ増やしても身につかない。好きならば頭にはいっていくし、もっと勉強しようということになるでしょう。

○「おまえはどうや」
 スポーツでも勉強でも「好きになる」ということが肝心なわけです。この信心の世界でも同じことが言えます。
 初代大先生は目が開く(覚める)とお広前へ出られる。夜遅くまでお広前で御用をされる。常にそういう生活でした。もっとお体をいとうてください、という周囲の声に「わしは一番面白いことをしている。好きなことをしている」と答えておられました。
 そんな時、若先生時代の二代大先生に「おまえはどうや」とよくおたずねになったようです。
 二代大先生は、何もお答えができなかったそうです。そのころを振り返って「ちっとも面白うない…。辛いばっかりや、という顔をしていたらしい」と述懐されています。すると「おまえはかわいそうやなあ、なにより面白いことをさせてもらっているのに」と初代大先生は情けなさそうに言われたそうです。
 当時から玉水教会のお広前は、たくさんの方が参ってこられていました。
 しかし信者さんはみな、お火鉢におられる初代大先生のもとに行ってしまい、若先生が座っているお結界には、あまり信者さんは並ばなかったようです。それでつい脇へさがってタバコを吸う。お願いの信者さんがあるとお結界へ出ていき、済めばまたさきほどののみかけのタバコを探して、という具合だったそうです。やがてあさましいことやとタバコをやめ、初代大先生のように御用が好きになる稽古(けいこ)に取り組まれたのでした。後年の楽しそうにお結界奉仕にお出ましになる二代大先生のお姿は、そういう稽古に培われてのものでした。
 ですから「信心を好きになる!」にまずとりくみましょう。お参りを好きになる。ご祈念を好きになる。そして、好きになるがさらに進んでいくと、自分のことばかり祈るご祈念でなく、他人(ひと)のことを祈るようになります。ひとのことを祈ることの妙味に気づいていくのです。そうなると信心の世界が開けていき、ますます信心が好きになるはずです。
 ぜひ、「好きになる」に取り組んでまいりましょう。

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